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【2023.12.21 GIR公開セミナー報告】Dr. Yoshifumi Itoh “Posttranslational regulation of cell surface proteinase: crucial events for cell migration and invasion”

イベント報告
2024.1.9

◆講演者:Dr. Yoshifumi Itoh (英国、オックスフォード大学、准教授)
◆講演タイトル: “Posttranslational regulation of cell surface proteinase: crucial events for cell migration and invasion”
◆日時:2023年12月21日(木) 16:00~17:00
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 6号館 3階 L0631 講義室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:稲田 全規 准教授(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 稲田チーム
開催案内
◆参加人数: 30名

講演概要

GIR稲田研究チームでは、コラーゲンの分解・代謝に基づく疾患治療分子の開発を進めている。本セミナーではオックスフォード大学のProf. Yoshifumi Ithoにお越しいただき、膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1(MT1-MMP)を取り巻く最新の知見について解説していただいた。Prof. Ithoは2001年よりオックスフォード大学にて研究を行われている。
がん細胞の浸潤は、基底膜の破壊や間質の細胞外マトリックスの分解により、血管やリンパ管を含む周囲組織へ広がるプロセスである。ECM分解酵素の1つであるMT-MMPは小胞に包まれてKinesin superfamily motor (KIF) と呼ばれるモータータンパクにより輸送されることで細胞膜へ局在する。KIFタンパクは45種類からなるファミリーであり、その中でも小胞輸送に関与するのはN-キネシンと呼ばれている。MT-MMPにおける小胞輸送のメカニズムは不明であったが、伊藤先生はKIFsが小胞輸送に関与することを発見し、その生物学的な意義について参加者に説明された。
蛍光タンパクを用いた生細胞イメージングではKIFタンパクによるMT-MMPの輸送がタイムラプスで観察され、参加者の興味を惹きつけた。さらに、臨床的な側面として、関節拘縮におけるMT-MMPの関与についても紹介していただいた。関節拘縮は指から掌にかけてこぶが現れる遺伝性疾患である。Prof. Ithoは関節拘縮患者のゲノムワイドスクリーニングからMT-MMPのSNPを発見し、これがMT-MMPのコラーゲン分解能を低下させる原因であることを見出された。このSNP自体はMT-MMPの構造に大きな変化を与えないため、現在はMT-MMPのコラーゲン分解に関与するアダプター分子をスクリーニングし、SNPとの関連性を研究されているとのことであった。
この公開セミナーには多くの学生や教員が参加し、質疑応答では活発な議論が行われ、非常に有意義なセミナーとなった。

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