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◆講演者:Dr. Wei-Li Hsu (台湾、国立中興大学、教授)
◆講演タイトル:”Development of rapid diagnostic tests and theraputic antibody for SFTSV infection”
◆日時:2025年1月22日(水) (14:00~15:00)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 11号館 1階 講義室 L1113
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院・工学研究院 黒田 裕(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 黒田 裕 チーム)
◆開催案内
◆参加人数:20人
講演概要
国立中興大学(台湾)Wei-Li Hsu教授は、マダニを媒介して人獣共通に感染が確認される重症熱性血小板減少症候群(SFTS)についての最近の研究を紹介した。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルス(SFTSV)によって引き起こされ、2009年に中国で初めて観測された後、韓国、日本、台湾を含む東アジア全域に広がった。ヒトの致死率が30%に達するため、有効なワクチンや治療法の開発が急務となっている。SFTSVの主要な表面抗原である糖タンパク質Gnは、強力な体液性免疫応答を誘導するため、ワクチンや治療用抗体の開発における標的と考えられている。Hsu教授は、モノクローナル抗体(mAb)の一連の作製を行い、それらの抗原エピトープを診断および治療に応用可能であることを示した。具体的には、エピトーププロファイルに基づいて、4種類の異なるエピトープを認識するmAbを単離し、SFTSV Gn抗原を検出する免疫クロマトグラフィー検査法を開発した。この検査系は、N末端Gnを認識するGn1 mAbを磁気ビーズに結合させて抗原を捕捉し、残りの3種類のmAbと抗マウス抗体をそれぞれテストラインおよびコントロールラインにコーティングした。ストリップの検出感度は、一反応あたりわずか10ngまでの抗原を検出できるレベルに達した。特に、作製された抗体の中でGn7が強力な中和活性を示し、90~100%の中和率を示すとともにIC50値は1.1µg/mLであった。さらにGn7は、台湾と日本で現在流行している2系統のSFTSVに対しても交差中和活性を示し、中和率は約90%、IC50値は0.6~6.7µg/mLの範囲に収まった。その治療上の可能性を高めるために、マウス由来抗体の可変領域(Fab)をヒトの定常領域(Fc)と融合したキメラGn7が作製され、mAbの免疫原性を低下させつつ同等の中和効果を保持した。これらの結果は、Gn7がSFTSV治療において有望な治療候補であることを示しており、将来的にはその防御効果と治療効果を評価するためのin vivo実験を計画されている。
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