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【2023.11.16 GIR公開セミナー報告】Dr. Takeshi Harayama “From Head to Toe : Biological significances of lipid head group and acylchain combinations”

イベント報告
2024.1.23

◆講演者:Dr. Takeshi Harayama (フランス、Institute of Molecular and Cellular Pharmacology – CNRS, コートダジュール大学、グループリーダー)
◆講演タイトル: “From Head to Toe : Biological significances of lipid head group and acylchain combinations”
◆日時:2023年11月16日(木) 16:30~17:30
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 8 号館 1 階 講義室 L0811
◆言語:英語
◆開催担当者:津川 裕司 准教授(グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 川野チーム
開催案内
◆参加人数: 30名

講演概要

 フランスCNRSの原山先生をお招きしました。原山先生は、実は半年ほど前にも来学いただき、講演してくださいました。しかしながら今回のトークは、半年前とは違った内容であり、研究の幅広さや脂質研究の面白さを再認識することができました。原山先生の教室では、「どうして細胞は多様な脂質を作るのか?」という学術的問いに対して、新しいゲノム編集技術(GENF)と脂質解析(リピドミクス)により解を求める研究を行なっています。本発表では、細胞を構成する脂質二重膜の非対称性におけるホスファチジルセリン(PS)とスフィンゴミエリン(SM)の足の長さに着目した最新の研究成果を発表いただきました。脂質は分子内に極性部と疎水性部を持ち、その疎水性部が向かい合うようにして脂質二重膜を形成します。その疎水性部の長さ(脂質の「足」にも例えられる)や不飽和度の数はものすごく多様です。その多様な脂質の足により、細胞膜の流動性や形状、そして膜タンパク質の活性を制御していると考えられています。本発表では、脂質二重膜の内側に多いとされるPSと、外側に多いとされるSMが、その絶妙なアシル基バランスによりお互いが向き合い、細胞の膜環境を制御している可能性について議論されました。
 また、もう一つ重要なトピックとして、ホスファチジルイノシトール(PI)のアシル基多様性の制御メカニズムに関する最新の研究についてトークしていただきました。PIは、細胞内外のシグナル伝達として重要な役割を担う脂質分子です。その代謝異常は、癌などの様々な疾患へとつながります。一方、その代謝制御機構の全容はまだ明らかになっていません。PIは、その部分構造を用いて1から合成するde novoパスウェイ経路、アシル基の組み替えにより多様性が形成される脂質リモデリング経路(ランズサイクルとも呼ばれる)、そしてシグナル伝達で使用されたPI分子を回収するリサイクル経路の3つによって、その恒常性が維持される可能性があります。原山先生は、GENFゲノム編集技術による様々な脂質代謝酵素遺伝子のノックアウト細胞を作成し、その3つの経路についての洞察を深めていました。原山先生のゲノム編集技術はいま、本学でも利用可能になりつつあり、今後TUAT-CNRSの共同研究がさらに進んでいくことが期待されます。

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