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【2023.7.18. GIR公開セミナー報告】Dr. Mathias Ulbricht “Advanced Polymer-Based Separation Membranes with Tailored Barrier and Surface Properties”

イベント報告
2023.8.28

◆Dr. Mathias Ulbricht (ドイツ、デュースブルク エッセン大学、教授)
◆講演タイトル: “Advanced Polymer-Based Separation Membranes with Tailored Barrier and Surface Properties”
◆日時:2023年7月18日(火) 15:30~16:45
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 140周年記念会館(エリプス) 3階 多目的ホール
◆言語:英語
◆開催担当者:大橋 秀伯 准教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 富永チーム
開催案内
◆参加人数: 38名

講演概要

 Duisburg Essen University のM athias Ulbricht 先生をお迎えして、G IR 公開セミナーを開催した。U lbricht 先生は膜工学を専門とし、E lsevier 社のJournal of Membrane Science 誌のE ditor, Elsevier 社Polymer 誌、S eparation and Purification Technology 誌、M DPI 社のM embranes 誌等のE ditorial Board Member を務めている膜工学分野のトップリーダーである。今回のセミナーでは、3 つのトピックスについてご講演いただいた。
 1つ目はナノろ過膜の汚れを防ぐa ntifouling コーティングに関するトピックスである。膜の大きな問題点として、水中の有機分子やタンパク質、微生物などによって汚れてしまい、膜性能が下がる問題点がある。これに対して、クリック反応を応用したポリマーの架橋により、膜に薬液を流すだけの簡便な操作で、膜表面に正負電荷を併せ持つポリマーであるp olyzwitter ion のa n tifouling 層をコーティングする手法を開発している。このa ntif ouling 層は何度でも修飾することもできる。この研究の特に優れた点は、すでに導入されている膜モジュールに対して薬液を流すだけで適用できる点であり、既存の膜設備に対して適用していくことが期待される。
 2つ目は電磁波に応答する薬物徐放膜である。 磁気ナノ粒子を混ぜ込んだ多孔質膜の細孔に、温度に応答して膨潤収縮する感温性ポリマーを修飾した膜を作製している。この膜は、電磁波の照射による磁気ナノ粒子の加熱をトリガーとした感温性ポリマーの収縮により、膜細孔が開き、薬物を放出するスマートな膜となっている。
 最後に、カーボン粒子とニッケルナノ粒子、イオノマーを導入した膜型反応器がNaBH 4 によるp n itrophenol の還元反応を加速することが示されていた。N aBH 4 をイオノマーが濃縮し、カーボン粒子がN aBH 4 から発生したH 2 を吸着して電子をニッケルナノ粒子に輸送することを助けるメカニズムが提唱されていた。
 最初のテーマは既存の膜の機能強化という工学的な応用研究であり、一方で2つ目の電磁波に応答する膜、また3つ目の膜反応器の新しい展開は、先生の純粋な興味による発案であるように思われる。遊び心も忘れずに最先端の研究を進めている姿勢に非常に感銘を受けた。教員、学生も含めた多くの聴衆から活発な質疑応答もなされ、非常に有意義なセミナーであった。

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