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【2023.8.18. GIR公開セミナー報告】Dr. Chin-Chang Hung “Evaluation of oceanic blue carbon potential in waters around Taiwan”

イベント報告
2023.8.22

◆Dr. Chin-Chang Hung (台湾、国立中山大学、教授)
◆講演タイトル: “Evaluation of oceanic blue carbon potential in waters around Taiwan”
◆日時:2023年8月18日(金) 16:30~17:30
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 2号館 1F 2-11教室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:梅澤 有 准教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 田中剛チーム)
開催案内
◆参加人数: 10名

講演概要

Chin-Chang Hung先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Hung先生は、海洋生物地球化学、海洋炭素循環を専門とし、東シナ海や南シナ海での海洋物質循環研究の第一人者でもある。Frontiers in Marine Sciences誌の副編集長や、Scientific Reports誌など複数の雑誌の編集委員を務めている。今回のセミナーでは、植物プランクトンの増殖・沈降や、海草の分布、海藻の養殖などを中心に、台湾周辺海域における、ブルーカーボン(海洋生物により固定される炭素)の現状について解説をいただいた。

日本同様に、2050年までにカーボンニュートラル(CO2などの温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成する)を目指す台湾では、ブルーカーボンへの関心が大きくなり、関連した研究も多く行われてきている。台湾南西部に位置する東沙環礁は、中国に近く政治的にも重要な位置にあり、観光客も受け入れない島であるが、中山大学の研究所が設置されている。内部波によって定期的に供給される豊富な栄養塩と、環礁内の静穏な環境のために、広大な海草藻場が広がっており、ブルーカーボン研究において重要な研究拠点となっていることが紹介された。台湾西部の南シナ海と東シナ海は、大陸棚、陸棚斜面、海溝部という共通した地形的特徴をもっているが、陸域からの栄養塩流入や湧昇流の影響が異なり、沈降有機炭素(ブルーカーボン)量への影響が、時空間的に異なってくることが多くのセジメントトラップ観測によって明らかにされてきたことが紹介された。また、透明度が高い台湾の沖合では、赤色光が透過しない水深30m以下の深度において、緑色光にも適応する紅藻類のSarcodia sueなどの養殖実験が進められ、底層からの栄養塩供給も利用した持続可能な養殖業が提案された。最後には、椰子の木の植樹を利用したグリーンカーボンの推進も紹介された。先生の都合により、来日滞在期間がお盆休みと重なったことや、農工大内に海洋を扱う研究者・学生が少ないこともあり、参加者数が少なかったが、それが功を奏して、参加した学部生・大学院生から、積極的に質問をすることが出来たのは良い機会となった。セミナーの終了後には、研究室にて、簡単な懇親会も行い、台湾の海草藻場での共同のフィールド調査の話も進めるなど、学生にとっても実りの多いセミナーであった。

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