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イベント報告

【2022.3.9 GIR公開セミナー報告】 “Endocrine-disrupting chemicals and the neurobiology of social behavior”

2022.3.10

◆Dr. Andrea C. Gore (米国、テキサス大学 、Division of Pharmacology and Toxicology、教授)

◆講演タイトル: “Endocrine-disrupting chemicals and the neurobiology of social behavior”

◆日時:2022年3月9日(水)

◆会場:Zoom

◆言語:英語

◆開催担当者:渡辺 元 教授 (グローバルイノベーション研究院 食料分野 渡辺チーム)

開催案内

◆参加人数: 12名 後日google classroomで配信

講演概要

今年度も新型コロナウイルス感染拡大のため、Dr. Andrea Goreを本学にお迎えすることができなかったので、昨年同様にZoomを用いたオンライでのセミナーを開催した。内分泌攪乱物質の生体影響のメカニズム、特に胎内で暴露された場合の中枢神経系の発達と社会性行動に対する影響について、最近の成果を交えてわかりやすく紹介していただいた。

Dr. Goreの研究室では、近年注目されている概念Developmental Origin of Health and Disease (DOHaD)に関して 2種類のEndocrine-disrupting chemicals (EDC) による出生前暴露のラットモデルを使用している。その一つは、以前にさまざまな工業製品で使用されていたポリ塩化ビフェニル(PCB)の1つであるAroclor1221であり、も一つは現在も農業で使用されている防黴剤のビンクロゾリンである。これらの化学物質の発育中の子への影響を解析するために妊娠後半期の母ラットに投与した結果が紹介された。この発達的曝露期間には、中枢神経回路の自然な性差が形成される脳の性分化の臨界期が含まれるため、EDCに対して特に脆弱になる。行動研究の結果は1)出生前のEDC曝露が、性成熟後の異性に対する嗜好性を攪乱させるた。 2)これらのラットは、異性に対する嗜好性の表現型を形成する匂いの好みに異常が見られた。 3)社会的環境下で発せられる超音波が、出生前EDC暴露によって変化した。 4)EDCは、社会的新規性テストで行動を混乱させまた。

次に、脳の室房核 (PVN) と視交叉上核 (SON) におけるオキシトシンとバソプレッシンシステムの役割を理解するために行われた研究について紹介された。結果は、これらナノペプチドの分布とそれらのシグナル伝達に関連する遺伝子の発現における、小さいが一連の有意な変化を示していた。

以上の結果は、EDCによる発達機の暴露が、動物の「本質的な表現型」を変える変化を誘発することを示唆している。

Dr. Goreたちの研究は、PCBなどの化学物質への妊娠中の曝露が、曝露された個体の発達中の脳、神経内分泌系、生殖および社会的行動に生涯にわたる影響を与えることを示している。人間と野生生物などすべての生物がその持続性と遍在性のためにプラスチックなどを介して環境化学物質にさらされており、深刻な影響を受けている可能性をしてしている。

教員のみならず学外も含めて学生も参加しており、講演の後、多くの質問があり、活発な質疑応答が行われた。

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