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イベント情報

オンラインセミナー【GIR公開セミナー】Dr. Andrea C. Gore, Dr. David Crews / テキサス大学(米国)

日時 2022.3.9(10:00~12:00)
会場

Zoom

講演者 Dr. Andrea C. Gore / Dr. David Crews
所属機関 テキサス大学 (米国)
講演タイトル ◆Dr. Andrea C. Gore (米国、テキサス大学 、Division of Pharmacology and Toxicology、教授) 
◆講演タイトル: "Endocrine-disrupting chemicals and the neurobiology of social behavior”

〈要旨〉
This talk will focus on work conducted on effects EDCs on neuroendocrine systems and the behaviors they regulate. Studies in the Gore Lab have been using a rat model of prenatal exposure to different classes of EDCs. This developmental exposure period includes the critical period of brain sexual differentiation, when natural sex differences in brain circuits become organized, thus making it particularly vulnerable to EDCs. Behavioral work will be presented showing that: 1) prenatal EDC exposures perturb mate preference in adulthood; 2) these rats also show deficits in odor preference that may explain the mate preference phenotype; 3) ultrasonic vocalizations emitted in a sociosexual setting are changed by prenatal EDCs; and 4) EDCs perturb behavior in a social novelty test. Then I will describe work conducted to understand the roles of the oxytocin and vasopressin systems in the PVN and SON, with results demonstrating a series of small but significant differences in the distribution of the nanopeptides and expression of genes related to their signaling. The collective results suggest that EDCs induce changes that, in combination, alter the “essential phenotype” of individuals.

〈参考文献〉
・Reilly MP, Kunkel MN, Thompson LM, Zentay A, Weeks C, Crews D, Cormack LK, Gore AC (2022). Effects of prenatal PCBs on hypothalamic oxytocin and vasopressin systems. Journal of Experimental Zoology Part A 337: 75-87. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jez.2475
・Hernandez Scudder ME, Weinberg A, Thompson L, Crews D, Gore AC (2020) Prenatal EDCs impair mate and odor preference and activation of the VMN in male and female rats. Endocrinology 161: 1-13. https://academic.oup.com/endo/article/doi/10.1210/endocr/bqaa124/5874569?guestAccessKey=192eb929-cd23-4e62-ba66-45a93063ffee
・Hernandez Scudder ME, Kunkel MN, Gore AC (2020) Exposure to prenatal PCBs shifts the timing of neurogenesis in the hypothalamus of developing rats. Journal of Experimental Zoology Part A 333: 550-560. https://onlinelibrary.wiley.com/share/author/9SY5WV4ZAJBWBDMXYYWW?target=10.1002/jez.2404
・Review article:
 Gore AC, Krishnan K, Reilly MP (2019) Endocrine-disrupting chemicals: Effects on neuroendocrine systems and the neurobiology of social behavior. Hormones and Behavior 111: 7-22. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/30476496/



◆Dr. David Crews (米国、テキサス大学 、Section of Integrative Biology、教授) 
◆講演タイトル: "Vertebrate Sexuality”

〈要旨〉
It is often thought that Sex and the same thing as Sexuality. It is not so. Sex is in the gonads, while Sexuality is in the brain. Research indicates that the determinants of gonadal sex do not dictate Sexuality.
言語 英語
対象 どなたでも、ご参加いただけます。
共催 グローバルイノベーション研究院 食料分野 渡辺チーム
卓越大学院プログラム
お問い合わせ窓口 グローバルイノベーション研究院・農学研究院 渡辺 元
e-mail:  gen (ここに@ を入れてください)cc.tuat.ac.jp
備考

参加人数: 12名

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講演者:Dr. Andrea C. Gore

 

今年度も新型コロナウイルス感染拡大のため、Dr. Andrea Goreを本学にお迎えすることができなかったので、昨年同様にZoomを用いたオンライでのセミナーを開催した。内分泌攪乱物質の生体影響のメカニズム、特に胎内で暴露された場合の中枢神経系の発達と社会性行動に対する影響について、最近の成果を交えてわかりやすく紹介していただいた。

Dr. Goreの研究室では、近年注目されている概念Developmental Origin of Health and Disease (DOHaD)に関して 2種類のEndocrine-disrupting chemicals (EDC) による出生前暴露のラットモデルを使用している。その一つは、以前にさまざまな工業製品で使用されていたポリ塩化ビフェニル(PCB)の1つであるAroclor1221であり、も一つは現在も農業で使用されている防黴剤のビンクロゾリンである。これらの化学物質の発育中の子への影響を解析するために妊娠後半期の母ラットに投与した結果が紹介された。この発達的曝露期間には、中枢神経回路の自然な性差が形成される脳の性分化の臨界期が含まれるため、EDCに対して特に脆弱になる。行動研究の結果は1)出生前のEDC曝露が、性成熟後の異性に対する嗜好性を攪乱させるた。 2)これらのラットは、異性に対する嗜好性の表現型を形成する匂いの好みに異常が見られた。 3)社会的環境下で発せられる超音波が、出生前EDC暴露によって変化した。 4)EDCは、社会的新規性テストで行動を混乱させまた。

 

次に、脳の室房核 (PVN) と視交叉上核 (SON) におけるオキシトシンとバソプレッシンシステムの役割を理解するために行われた研究について紹介された。結果は、これらナノペプチドの分布とそれらのシグナル伝達に関連する遺伝子の発現における、小さいが一連の有意な変化を示していた。

 

以上の結果は、EDCによる発達機の暴露が、動物の「本質的な表現型」を変える変化を誘発することを示唆している。

 

Dr. Goreたちの研究は、PCBなどの化学物質への妊娠中の曝露が、曝露された個体の発達中の脳、神経内分泌系、生殖および社会的行動に生涯にわたる影響を与えることを示している。人間と野生生物などすべての生物がその持続性と遍在性のためにプラスチックなどを介して環境化学物質にさらされており、深刻な影響を受けている可能性をしてしている。

 

教員のみならず学外も含めて学生も参加しており、講演の後、多くの質問があり、活発な質疑応答が行われた。

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講演者:Dr. David Crews

 

今年度も新型コロナウイルス感染拡大のため、Dr. David Crewsを本学にお迎えすることができなかったので、Zoomを用いたオンライでのセミナーを開催した。昨年、講演していただいた生物、特にアカミミガメやグリーンアノールトカゲなどの爬虫類の様々なレベルにおける性決定のメカニズムについて、初期の研究から最近の成果を交えて性分化の基本から包括的にわかりやすく紹介していただいた。
セックス(性)とセクシュアリティ(性別)と同じことだとよく考えられるが、それはそんなに単純なことではない。セックス(性)すなわち生殖細胞は性腺にあり、セクシュアリティ(性別)は脳にあります。 研究によると、性腺の性の決定要因は性別を決定するものではない。性には様々な要素があり、段階がある。 遺伝的要因による性決定に関しては、性染色体が関与するものでもX Y型とZ W型がある。さらに、それらのサブタイプも存在する。これは、累積的で経時的に、本質的に出現するさまざまな要素で性分化が誘導されていることを意味する。しかしながら、これらの要素間の機能的な関連付けが、必ずしもセクシュアリティの基本ではない。 これは、染色体の性が必ずしも性腺の性を決定するわけではなく、性腺の性が必ずしも形態学的な性を決定するわけではないことを意味する。性腺の性を決定するものは性を決定しない。 性腺の性は必ずしも外見的セクシュアリティと同じではない。行動上のセクシュアリティは、それを制御する脳神経系の性分化によるが、近年の研究は多くの種で脳神経系の可塑性を示している。これまでに研究されたすべての脊椎動物でセクシュアリティの多くの異なる要素の間には1つの関係しかないようである。 つまり、配偶子の発達は性ステロイドホルモンの存在に依存する。しかしながら、性ステロイドホルモンの産生と分泌は配偶子の存在や発達に依存しない。性ステロイドホルモンの産生と分泌には、個体群の社会性や温度や日長などの物理的環境、さらには植物由来や人工物質などによる化学物質環境によって影響を受けることが知られている。
人間が作り出した化学物質が、地球規模で大気や海洋を汚染している今日、人間の活動が多くの種の進化に影響を与えていることを改めて認識させられる講演であった。

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