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【2024.2.6 GIR公開セミナー報告】Dr. Raghavan Srinivasan “Evaluation for Ecosystem Services by Soil and Water Assessment Tool (SWAT)”

イベント報告
2024.2.15

◆講演者:Dr. Raghavan Srinivasan (米国、テキサスA&M大学、教授)
◆講演タイトル: “Evaluation for Ecosystem Services by Soil and Water Assessment Tool (SWAT)”
◆日時:2024年2月6日(火) 13:00~15:00
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 12号館 (第2講義棟) 2階 21講義室、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:加藤 亮 教授(グローバルイノベーション研究院 食料分野 加藤亮チーム
開催案内
◆参加人数: 40人(対面20人,オンライン20人)

講演概要

 Raghavan Srinivasan教授を迎えて,GIR公開セミナーを行った。Srinivasan先生は,農業地域における水文流出・水環境評価モデルとして,デファクトスタンダードになっているSoil and Water Assessment Tool (SWAT)の開発者である。

 本セミナーではSWATの生態系サービス評価について講義が行われた。生態系サービスは自然環境の持つ供給(食料,燃料),調整(洪水緩和,水質・大気・土壌の保全),文化審美サービスから構成され,人間社会への福利厚生に貢献する,様々な機能を指す。一方で,それらの機能は相互にシナジーやトレードオフの関係にある場合が多く,統合的な評価が困難である。また,生態系サービスの向上のためには,自然環境そのものを活用した対策が望まれるが,生態系の持つ複雑性を考慮するためには,SWATのようなモデル開発が有効であることが,様々な研究事例を通じて検証された。

 また,SWATのようなモデル評価は,将来的にはデジタルツインと呼ばれる技術開発につながり,生態系サービスは,次世代型カーボンクレジットであるPayment for Ecosystem Services (PES)と呼ばれる,生物多様性の損失を緩和する新たな市場型の地球規模の解決策に貢献することが期待されることが示された。

 セミナーでは,博士課程の学生を中心に活発な議論が展開され,特に米国で検討されている生態系サービス向上に向けた,従来型の保全型の土地利用を集積させる手法と,分散的に保全型の土地利用を流域全体に混合していく手法の評価についての議論が進んだ。分散型の保全的土地利用は,生産性を減ずるものの地域住民の導入意欲が高く,新たな価値観が形成されつつあることが示された。このような新しい観点が,工学的アプローチから示唆されるのは極めて興味深く,今後の分野融合型の研究,社会実装型の研究に大きく貢献することが期待された。

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