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【2022.6.28 GIR公開セミナー報告】Dr. Takanari Inoue “Total synthesis of innate immune functions in inert and artificial cells”

イベント報告
2022.7.4

◆Dr. Takanari Inoue (米国、ジョンズホプキンス大学、教授)

◆講演タイトル: “Total synthesis of innate immune functions in inert and artificial cells”

◆日時:2022年6月28日(火)

◆会場: 東京農工大学 小金井キャンパス 新1号館グリーンホール

◆言語:英語

◆開催担当者:川野 竜司 教授 (グローバルイノベーション研究院 ライフサイエンス分野 川野チーム)

開催案内

◆参加人数: 50名

講演概要

井上尊生先生をお迎えしてGIR公開セミナーを開催した。井上先生は細胞生物学を専門としており、2008年からJohns Hopkins大学で研究室を主宰し合成生物学分野で世界を牽引するトップリーダーの一人である。今回のセミナーでは、好中球の走化性に着目し、複雑なシグナル伝達ネットワークを分析して再構成する先端研究に関して、生細胞を用いたアプローチと人工細胞を用いたアプローチをそれぞれ解説いただいた。
好中球は侵入した微生物を貪食し殺菌する。この過程における好中球の走化性には様々な因子が関与しており、井上先生の研究グループはその走化性機能の人工的再構成を試みた。具体的には二種類の膜タンパク質に結合して細胞膜中で二量体化させる化学物質(分子プローブ)を全合成した。これにより合成した化学物質をシグナルとして膜中二量体化によるシグナル伝達を再構成でき、マイクロ流路を用いた実験により膜タンパク質の局所的二量体化とそれに起因するアクチン重合を実現することで、走化性の模倣に成功した成果を紹介いただいた。
最近では細胞膜の基本構造を模した脂質二分子膜小胞(リポソーム)を用いた「細胞を創る」研究が世界中で行われている。この人工細胞構築へとアプローチする研究も紹介いただいた。ここでは光照射により膜タンパク質の局在・膜中二量体化を制御し、実際にリポソーム内での局所的なアクチン重合による走化性機能の再構成に成功した成果を解説いただいた。リポソームの移動スピードは生細胞と同等のものであり、人工細胞を用いた細胞機能の模倣と更なる応用への可能性を示すとともに、その重要性を説明いただいた。
今回のGIR公開セミナーは、学術変革領域研究(学変A「超越分子システム」、学変A「ジオラマ行動力学」、学変B「遅延制御超分子化学」)と本学GIRの融合セミナーであり、講演終了後には分野を跨ぐ活発なディスカッションが行われた。また教員だけでなく、幅広い分野の学生にも刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。

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