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◆講演者:Prof. Patrick Rozier (フランス、トゥールーズ大学、教授)
◆講演タイトル:“Recent Advances in Na-ion Batteries: Solid Chemistry and Materials Design for High-Performance Electrodes”
◆日時:2026年3月2日(月) 15:00~17:00
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 11号館 1階 L1111講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院 松村圭祐 特任助教 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 岩間チーム)
◆開催案内
◆参加人数:18人
講演概要
本セミナーでは、次世代蓄電デバイスとして注目されているナトリウムイオン電池(Na-ion battery)について、材料科学およびデバイス開発の観点から包括的な講演を行っていただいた。まず、Liイオン電池市場の拡大を背景として、資源制約やコストの観点からNaイオン電池が注目されている現状について整理された。続いて、Li系からNa系へとキャリアイオンを変更することで生じる材料科学的なアドバンテージと課題について、基礎的な観点から解説が行われた。
特に正極材料については、結晶構造の特徴に基づいて体系的な説明がなされた。Naイオン電池の代表的な正極材料として、層状化合物、ポリアニオン化合物、プルシアンブルー類似体の三つの系について、それぞれの構造的特徴と電気化学特性が紹介された。層状化合物に関しては、Liイオンよりもイオン半径が大きいNaイオンの存在により、結晶構造やイオン配置が大きく変化する点が説明された。特に、Naイオンは遷移金属層間で明確に分離した配置を取り、さらに層状構造におけるstacking sequenceの違いによって、Naが八面体サイトだけでなく三角柱サイトにも存在し得ること、その違いが電気化学特性に与える影響について解説があった。
また、負極材料についても議論が行われ、特にハードカーボン負極におけるNa貯蔵メカニズムについて、近年の研究成果を踏まえた整理が紹介された。ハードカーボンでは、グラファイトとは異なる複雑な反応機構が存在し、ナノ細孔や欠陥構造との関係を含めて現在も議論が続いていることが説明された。
さらに電解液に関する研究動向についても紹介があり、溶媒の違いによってNa金属析出電位が変化するなど、Na系特有の電気化学挙動が示されることが報告された。これらの要因はセル設計や安全性評価にも影響する重要な要素である。
最後に、Naイオン電池の電気化学評価の難しさについても指摘があった。Na系では安定な参照電極の確立が難しく、ハーフセル評価がLi系ほど単純ではない。また、材料間で性能を一律に比較できる実験系の構築も容易ではないため、評価条件を慎重に設定しながら研究を進める必要があることが強調された。本講演は、Naイオン電池研究の材料科学的基盤からデバイス評価までを俯瞰的に理解する貴重な機会となり、今後のポストリチウム蓄電研究の方向性を考える上で重要な示唆を与える内容であった。
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