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植物の生物ストレスおよび環境ストレス応答機構の解明とその応用

【食料】 福原チーム (2022年度活動終了) ※終了時の情報を記載しています

  • 研究概要

    植物は、常に病原体による病気や害虫による食害などの生物ストレスおよび乾燥・塩・高温・低温などの非生物(環境)ストレスに曝されて生育・生存している。多くの野生植物や農作物(栽培化された植物)の原種は、これらの生物・非生物ストレスに対して耐性機構を備えているが、農作物では、これらのストレスに感受性の品種が多く、生物ストレスおよび非生物(環境)ストレスにより農作物の収量は70%〜50%程度に低下すると想定されている。したがって、植物が本来備えている生物ストレスおよび環境ストレス耐性機構を解明し、ストレス耐性作物(食用植物)の作出は、重要かつ喫緊の研究課題である。
    近年、様々な生物種における網羅的RNA配列解析から、多くの野生植物・作物の原種には、ウイルスが潜在感染(不顕性感染)している事実が明らかになってきた。ウイルスの潜伏感染による宿主植物のRNA干渉機構の活性化と環境ストレスや生物ストレスに対する耐性との関連について研究を進める。同時に、2本鎖RNAを植物体に直接塗布もしくは吸収させることで、食用植物にRNA干渉を誘導し生物ストレス(病害虫)に対する抵抗性を付与することを目的とする。

  • 研究目的

    RNA干渉機構は、2本鎖RNAから生成する21-24塩基の小分子RNAによって誘導される遺伝子発現制御機構である。この機構は、ウイルスやトランスポゾンなどの核酸寄生体をはじめとする多様な外的因子(生物ストレス)に対する主要な防御機構と考えられる。同時に、乾燥、低温、貧栄養などの非生物(環境)ストレスに対する応答においても小分子RNAが重要な役割を果たすことが報告されている。
    本研究では、食用植物の原種を含む野生植物が備えている様々な環境ストレスや生物ストレスに対して耐性を有する一つの要因として、常に環境ストレスや生物ストレスに晒され、特にウイルスが不顕性感染することによりRNA干渉機構が常に活性化されている状態であることによってもたらされているとの仮説を証明することを目的とする。同時に、食用植物にRNA干渉を誘導し生物ストレス(病害虫)および環境ストレスに対する抵抗性を付与する手法として、2本鎖RNAを植物体に直接塗布もしくは吸収させることでRNA干渉を誘導する方法を計画している。
    これらの農作物(食用植物)に対して、RNA干渉機構を活性化し生物ストレスおよび環境ストレスに耐性を付与するという本研究の目的・計画は、独創的であり新規性も高く、遺伝子組換え技術(GMO)や化学農薬に依存しない安心・安全な技術であり、社会的に容易に受け入れられ、持続可能な開発目標(Social Development Goals、SDGs)に合致する将来の実用技術として有望である。

  • 研究計画

    南米チリで採取された野生トマト(Solanum chilense)は、他の野生植物が生育できないような高濃度の食塩やホウ素塩を含む乾燥地帯に生育していることから、耐塩性・耐乾燥性を有していると考えられる。この野生トマトの環境ストレス耐性のメカニズムを、食用トマトと比較し明らかにする。また、野生トマトは、ウイルスや糸状菌などの病原体(生物ストレス)に対しても耐性である。トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)等を接種した野生トマトと食用トマトを用いて野生種トマトの生物ストレス耐性機構を解明する。

    モデル植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に近縁なアブラナ科の多年生植物ハクサンハタザオ(A. halleri)は、亜鉛やカドミウムなどの重金属に耐性をもつと同時に、複数のウイルスが無病徴(不顕性)感染していることが報告されている。すなわちハクサンハタザオは、生物ストレス(ウイルス感染)および環境ストレス(重金属)に耐性を有する。ウイルスが不顕性感染したハクサンハタザオにおけるRNA干渉の活性化の評価、内生植物ホルモンの解析等を行いウイルス感染植物の生物ストレス(ウイルス感染)および環境ストレス(重金属)に対する耐性機構の分子基盤を解明する。
    これら野生植物や食用植物の原種が有する生物ストレスおよび非生物ストレスに対する耐性機構を解明する研究と並行して、RNA干渉機構を利用した生物ストレス耐性植物の作出やRNA干渉農薬の作出を目標とする。具体的には、食用植物(トマト)に2本鎖RNAを直接塗布もしくは吸収させ、害虫(ハダニ)、病原菌(トマト萎凋病菌)、ウイルス(トマト黄化葉巻病ウイルス)に対してRNA干渉を誘導して防除する技術の確立を目指す(RNA干渉農薬)。

代表者について

外国人研究者について

小岩 尚志

所属研究機関 テキサスA&M 大学(米国)
部門 Department of Horticultural Sciences
職位 教授
URL

Antonio Di Pietro

所属研究機関 コルドバ大学(スペイン)
部門 Department of Genetics
職位 教授
URL

Jeffrey Anderson

所属研究機関 オレゴン州立大学(米国)
部門 Department of Botany and Plant Pathology
職位 准教授
URL

Hannes Kollist

所属研究機関 タルトゥ大学(エストニア)
部門 Plant signal research group
職位 教授
URL

Vojislava Grbic

所属研究機関 ウェスタンオンタリオ大学(カナダ)
部門 Department of Biology
職位 准教授
URL

その他の研究者

有江 力  (農学研究院・教授)
梅澤 泰史  (農学研究院・教授)
鈴木 丈詞  (農学研究院・准教授)
田原 緑  (グローバルイノベーション研究院・特任助教)    (2020.04.01 – 2021.03.31)

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