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【2023.9.22. GIR公開セミナー報告】 Dr. David Kisailus “Biologically-inspired Multifunctional Architected Materials”

イベント報告
2023.10.2

◆Dr. David Kisailus (米国、カリフォルニア大学 アーバイン校、教授)
◆講演タイトル: “Biologically-inspired Multifunctional Architected Materials”
◆日時:2023年9月22日(金) 17:00~18:00
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 140周年記念会館(エリプス) 3階 多目的ホール、Zoom
◆言語:英語
◆開催担当者:新垣 篤史 教授(グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 田中剛チーム
開催案内
◆参加人数: 47名

講演概要

 David Kisailus先生をお迎えして、GIR公開セミナーを開催した。Kisailus先生は、材料科学を専門とし、UNESCO Chair of in Materials and Technologies for Energy Conversion, Saving and Storage (MATECSS)のメンバーや材料科学の専門誌Advanced Materials Interfaces誌の編集委員を務める生体関連材料科学分野のトップリーダーの1人である。
 本セミナーでは、多様な生物の例をもとに、その構造と機能の材料への応用可能性についてお示しいただいた。海洋に生息するシャコの持つハンマー状の補脚部の硬組織には繊維がらせん状に堆積したマイクロ構造が存在する。補脚部表面に衝撃があった場合、有機物のらせん構造がエネルギーを外に逃がすことにより高い強度を発揮していることが説明された。また、補脚部硬組織内にクラックが生じた際には、硬組織内のチューブ構造からミネラル成分が供給され、硬組織が修復されるとのことであった。さらに、最近の研究で、太古の昔に地球上に存在した三葉虫の化石からも同様のらせん構造を発見し、少なくとも古生代の生物がこの構造を利用していたことが紹介された。
 補脚部表面はナノ粒子で覆われていることを新たに発見したことが紹介された。ナノ粒子は単なる無機物ではなく、有機物を含んでいるため、圧縮試験においても潰れない特性を有することがわかった。ボクサーがグラブをはめて、拳を保護しているのと同じメカニズムであるとのわかりやすい説明がなされた。さらに、カーボンファイバーコンポジットを用いて、粒子で被覆した板状材料を作製したところ、7 g/m2の粒子コーティングにより、被覆なしの場合と比べ、約50%のダメージの低減に成功したことが報告された。これらの研究において重要なのは、スケールアップの可否であり、単なる一研究者の研究にとどめず、材料学、物理学、生物学、メカニカルエンジニアリングなどの多様な研究者とのコラボが必要であることが強調された。実際、Kisailus先生は、スタートアップ会社HELICOID industryを立ち上げており、自身の技術のライセンス化によって作られた製品が、アイスホッケーNational Hockey League (HHL)の公式スティックに採用された例が紹介された。
 講演後には、多数の学生からの質問があり、教員のみならず多くの学生に刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。

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