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◆講演者:Dr. David Kisailus (米国、カルフォルニア大学アーバイン校、教授)
◆講演タイトル:”Beetles and Other Bugs: Leveraging Biological Processes for Advanced Engineering Systems”
◆日時:2026年3月10日(火)(18:00~19:00)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 140周年記念館(エプリス)3階 多目的ホール
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院 工学研究院 新垣 篤史 教授 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 田中剛チーム)
◆開催案内
◆参加人数:30人
講演概要
材料科学を専門とされるDavid Kisailus先生をお迎えし、GIR公開セミナーを開催した。Kisailus先生は、生体を材料開発の源とするバイオインスパイアードマテリアル(生体模倣材料)分野において第一線で活躍されており、本講演では甲虫外骨格の新機能の発見と微生物による酸化鉄溶解の新機構に焦点を当て、最新の研究成果が報告された。
講演の前半では、砂漠に棲む陸生甲虫の外骨格を対象とした構造解析研究が紹介された。マイクロファイバーが重なり合うことで形成される高度な階層構造が、生体硬組織の優れた機械的強度を支えていることが明らかにされ、そのミクロな構造設計の巧妙さが詳しく解説された。外骨格は身体を物理的な衝撃から守るだけでなく、乾燥環境への適応という観点からも重要な役割を担っていることが紹介された。Kisailus先生の研究グループは、外骨格のミクロ構造内に水を輸送するトンネル状の通路と、蒸発を防ぐバルブ構造が存在することを電子顕微鏡観察等により明らかにした。さらに、生体模倣によって作製した人工材料を用いた実験により、これらの機能を定量的なデータとして実証した成果も報告された。
後半では、微生物と酸化鉄の相互作用に関する新たな発見が紹介された。微生物が付着した酸化鉄表面において、電子顕微鏡を用いた結晶表面の経時的な観察によりメソクリスタルが形成されることが明らかにされた。この知見は、酸化鉄の溶解と再結晶化が同時進行する新しい機構の存在を示唆するものである。シデロフォアをはじめとする生体分子の関与が想定されており、同グループでは現在もその機構解明に向けた研究を精力的に進めていることが紹介された。
講演終了後には学生からの活発な質疑応答が行われ、Kisailus先生から丁寧かつ示唆に富んだ回答が寄せられた。本セミナーは、教員のみならず多くの学生にとって知的刺激に満ちた非常に有意義な機会となり、バイオインスパイアードマテリアル研究の最前線に触れる貴重な場となった。
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