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【2025.11.13 GIR公開セミナー報告】Dr. Takeshi Harayama “Systematic analysis of regulators for lipid composition”

イベント報告
2025.12.2

◆講演者:Dr. Takeshi Harayama (フランス、コートダジュール大学、グループリーダー)
◆講演タイトル:”Systematic analysis of regulators for lipid composition “
◆日時:2025年11月13日(木)(16:30~17:30)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 8号館 2階 L0821講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院・工学研究院 津川裕司 教授 (グローバルイノベーション研究院  ライフサイエンス分野 川野チーム
開催案内
◆参加人数:30

講演概要

本セミナーは、東京農工大学が推進する国際連携プログラム(GIR)の一環として、フランスCNRSより原山武士博士を招聘し、膜脂質の恒常性制御メカニズムに関する最新の研究をご講演いただいたものである。本学における脂質研究の高度化、さらには研究者・学生の国際的視野の拡大を目的として開催した。当日は学生およびポスドクを中心に多数の参加者が集まり、終始活発な議論が交わされる大変有意義な機会となった。
 原山氏は、膜脂質の多様な構造バリエーションが細胞機能にもたらす影響、ならびにその制御メカニズムについて、体系的かつ包括的な研究成果を紹介された。脂質分子の多様性とその生物学的意義について、膜脂質は単なる“境界”ではなく、構造多様性によって多彩な機能を担うことを述べていただいた。また、生物種間・臓器間・オルガネラ間で脂質組成が大きく異なる理由を、代謝と膜間輸送の視点から丁寧に解説された。脂質代謝酵素の網羅的理解のため、効率的なCRISPR-Cas9システムを活用して酵素群を体系的にノックアウトする手法を紹介し、脂質組成を操作するためのゲノム編集技術の重要性や、栄養介入など環境要因との相互作用について言及された。
 また、基礎的な研究だけでなく疾患関連脂質として注目されるデオキシセラミドに関する最新知見を紹介していただいた。脂質異常が神経疾患や代謝疾患の発症につながる可能性を示し、脂質生化学が病態理解の鍵を握ることを強調された。GPAT・AGPATを含む脂質合成に重要な酵素ファミリーを包括的にノックアウトした研究を最後に紹介されていた。個々の酵素を欠損しても他の酵素が補償するロバスト性、一方で補償不能な非冗長的ステップの存在が明確化され、これにより新しい脂質合成ネットワークの仮説が生まれることについて、脂質研究の楽しさが十分伝わる内容をトークしていただいた。

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