メニュー

トピックス

【2025.7.22,23 GIR公開セミナー報告】 Dr. Halil Cakan “Archaeobotany – History of plant use and role of botanical gardens”

イベント報告
2025.7.31

◆講演者:Dr. Halil Cakan(トルコ、チュクロバ大学、教授)
◆講演タイトル:”Archaeobotany – History of plant use and role of botanical gardens”
◆日時:2025年7月22日(火)、23日(水)(15:00~17:00)
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 農学部 5号館 1階 11講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:吉川 正人准教授  (ARC 赤坂研究チーム) 
開催案内
◆参加人数:17人

講演概要

Erasmus+プログラムで訪日中のトルコCukrova大学のHalil Cakan教授をお迎えして,GIRセミナーを行った。Cakan教授はトルコ有数の規模をもつ大学付属のAli Nihat Gokyigit植物園の園長を務めており,古代遺跡から出土した植物遺骸等から過去の植物の利用や野生植物の栽培化の歴史について研究する考古植物学Archaeobotanyの第一人者である。本セミナーでは,Cakan教授が携わった遺跡調査の事例を中心に,農業史,民俗学,植物学の融合的領域に関する話題を提供していただいた。
トルコでは遺跡発掘の過程で,多くの炭化した植物種子が見つかり,それを年代ごとに同定することによって,メソポタミア地方の「肥沃な三角地帯」から派生した穀物栽培の歴史をたどることが可能である。遺跡においては,現在の農作物の原種に近い栽培作物近縁種が自生していることが多く,それらは今後の気候変動への耐性や新しい病害虫への抵抗性をもつ遺伝子を保持している可能性があり,遺伝資源としての重要性が注目されている。そのため,遺跡の保存にあたっては,こうした生物資源の生育地としての観点も重要であるとの指摘をされた。遺跡公園は,このような植物に対して意図せず保全の役割を担うことができ,現在,生物多様性保全の効果的な方策として国際的に注目されているOECM(Other Effective area based Conservation Measures)に相当するものと見解が示された。
オリーブ,ブドウ,ザクロなど現在でも地中海地方の主要な産物となっている農作物は,約8000年前の青銅器時代には利用が確認されている。Cakan教授らの研究では,遺跡から見つかる植物の種多様性は時代によって変化し,気温の低下がみられた鉄器時代の小氷期には,利用可能な植物が大きく減少していたことが示された。また,遺跡から見つかる植物には,食料としてだけではなく,繊維や薬用,呪術の道具として使われたと推定されるものも多く,自生する植物の利用が文化の発展を支えてきたことが示された。
本セミナーは,農学部の幅広い領域との関連をもつため,多くの聴衆の興味を引き,講演後には活発な意見交換が行われ,たいへん有意義なセミナーとなった。

このページの上部へ