メニュー

トピックス

【2025.7.16.GIR公開セミナー報告】Prof. Patrick Rozier “Understanding Disorder in Battery Materials through Advanced Structural Analysis”

イベント報告
2025.7.29

◆講演者:Prof. Patrick Rozier (フランス、トゥールーズ大学、教授)
◆講演タイトル:“Understanding Disorder in Battery Materials through Advanced Structural Analysis”
◆日時:2025年7月16日(水)(13:00~14:30)
◆会場:東京農工大学 小金井キャンパス 工学部講義棟 3階 L0032講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院 松村圭祐 特任助教 (グローバルイノベーション研究院 エネルギー分野 岩間チーム
開催案内
◆参加人数:22人

講演概要

今回、Patrick Rozier 教授をお迎えし、GIR公開セミナーを開催した。Rozier 教授は、フランス・トゥールーズ大学の教授であり、CIRIMATにおいて、電池材料の構造解析研究を先導する世界的な研究者である。
本講演(”Understanding Disorder in Battery Materials through Advanced Structural Analysis”)では、近年注目されているカチオン無秩序やstacking fault、intergrowthといった構造欠陥が電池性能に与える影響について、理論と実例の両面から詳細な解説が行われた。たとえば、LiFePO4におけるアンチサイト欠陥や、スピネル型LiNi1/2Mn3/2O4における逆位相境界といった典型的な欠陥は、イオン伝導性や出力特性を低下させる一方で、カチオン無秩序による構造安定化や容量保持性の向上といった正の効果も明らかにされつつあることが強調された。
構造欠陥は、点欠陥、stacking fault、intergrowth、非晶質化などに分類され、それぞれが結晶の長周期秩序に与える影響についての説明がなされた。これに関連して、X線・中性子・電子線といった各種プローブの特性、スモールアングルおよびワイドアングル散乱によって得られる構造情報の違い、Braggピークの形状や強度が結晶性や微細構造に関するどのような情報を含んでいるかが、理論と実験データの両面から紹介された。さらに、TEMを用いた欠陥構造の直接観察や、高速充放電時における機械的ひずみによる構造歪み、Na2RuO3におけるハニカム型Na配置といった最新の研究成果も提示された。特に、ポリアニオン系材料においてアニオン置換が格子の幾何学的変形を誘発し、それが電気化学特性に及ぼす影響についての考察は、材料設計における新たな視点を提供するものであった。
質疑応答では、stacking faultによる回折ピークの非対称なブロードニングの要因や、フォールトモデルを用いた構造解析の限界、粒子の異方性や配向性の影響などについて活発な議論が行われた。本セミナーを通じて、構造欠陥および無秩序構造の詳細な分類と、それらの電気化学的性能との関係に対する理解が深まるとともに、多様な構造解析手法の適用と組み合わせの重要性が再確認された。今後、欠陥を単なる劣化要因として捉えるのではなく、性能制御のための設計要素として活用する研究が一層加速すると期待される。引き続き、国際的な研究連携と人材育成を通じて、次世代蓄電材料の開発に貢献していきたい。

 

このページの上部へ