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【2025.6.26.GIR公開セミナー報告】Dr. Maximilian L. Allen “Adapting Camera Traps to Understand Wildlife Ecology and Behavior”

イベント報告
2025.6.30

◆講演者:Dr. Maximilian L. Allen (米国、イリノイ大学、リサーチプロフェッサー)
◆講演タイトル:“Adapting Camera Traps to Understand Wildlife Ecology and Behavior”
◆日時:2025年6月26日(木)(16:30~18:00)
◆会場:東京農工大学 府中キャンパス 農学部1号館 1階 1-11講義室
◆言語:英語
◆開催担当者:グローバルイノベーション研究院 稲垣 亜希乃 特任教授 (グローバルイノベーション研究院 ARC 赤坂チーム
開催案内
◆参加人数:36人

講演概要

イリノイ大学のAllen先生をお迎えしてGIR公開セミナーを開催した。Allen先生は大型食肉目動物を中心とした野生動物の生態学・行動学を専門とし、年間15本以上の論文を出版するなど、生態学分野で注目されている研究者である。今回のセミナーでは、Allen先生が得意とするカメラトラップ手法(自動撮影カメラを用いた手法)について、どのように野生動物の生態・行動解明に適用できるかについて解説いただいた。
講義は3つの規模(行動解明を目的とした小さな規模「Unstructured Surveys」、地域規模「Structured Surveys」、より大きな規模「Large-scale Monitoring」)からなるセクションごとに、カメラトラップを用いた研究の事例紹介をしていただいた。具体的には、Unstructured Surveysのセクションでは、中型肉食動物同士の遭遇競争やピューマの匂いマーキングについて取り上げるとともに、Structured Surveysのセクションでは、絶滅危惧種であるスマトラトラの獲物資源の解明やイリノイ州の哺乳類多様性の解明について紹介いただいた。また、Large-scale Monitoringのセクションでは、アメリカ全土の動物相の把握およびモニタリングをするSnapshot USAプロジェクトについてや、そのデータを用いたアメリカ全土におけるコロナ禍が食肉目動物にもたらした影響に関する論文紹介をいただいた。カメラトラップをさまざまな規模でどのように使用し、どのようなことを明らかにできるのか、を体系的に解説いただくことで、野生動物の行動・生態解明、さらには保全手法としてのカメラトラップの有効性を教員・学生ともに学ぶことができた。特に、日本で多く行われているカメラトラップ研究はStructured Surveysに該当する規模のものが多く、Unstructured Surveysに該当する特定の種や個体群における行動解明は未開拓な部分が多い。Allen先生が実際に自動撮影カメラで撮影した、ボブキャットとコヨーテの闘いやピューマのマーキング行動、そしてそのマーキングサイトに訪れるハイイロギツネなどを見ながら、記録をベースにどのように一つの論文としてまとめていくかの話は非常に興味深かった。また、同様の行動解明に取り組んでいる学生も複数いたため、講義終了後も具体的な研究内容に関する議論があがるなど、教員だけでなく学生にとっても大きな刺激となった。Allen先生はセミナーを通じて終始、国際共同研究の重要性と自身の経験を語ってくださり、国際的な視点で研究に取り組むきっかけを参加者に提供していただいた。

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