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イベント報告

【2021.2.9 GIR公開セミナー報告】 “Host adaptation and evolution in the fungal pathogen Fusarium oxysporum”

2021.2.23

講演者 

Dr. Antonio Di Pietro (Full Professor, Department of Genetics, University of Cordoba, Spain)

◆日時:2021年2月9日(火)

◆会場:Zoom

◆言語:英語

◆開催担当者:有江 力 教授 (グローバルイノベーション研究院  食料分野 福原チーム)

◆参加人数:38人 後日google classroomで配信

開催案内

講演概要

Antonio Di Pietro先生をお迎えして、GIR公開セミ ナーを開催した。 Di Pietro先生は、植物病理学分野で、特に、植物病原性F. oxysporumのゲノム・分子生物学的析による発病、宿主特異性分化、病原―宿主相互作用分野の研究をご専門とし、世界的に著名である。今回は、「Host adaptation and evolution in the fungal pathogen Fusarium oxysporum」のタイトルでご講演をいただいた。
病原性を持つ病原菌はしばしば宿主特異性を示すが、時に変異し、宿主範囲のシフトまたは拡大をもたらす。土壌伝染病の病原子嚢菌Fusarium oxysporumは、100を超える食用植物種に、維管束性の壊滅的な損失を引き起こすだけでなく、免疫不全のヒトに播種性感染症を引き起こすことがある。注目すべきことに、この真菌の1つの野外分離株は、トマト、免疫抑制マウス、およびモデル昆虫宿主ハチノスツヅリガを殺すことができる。F. oxysporumは、リピートと転移因子(TE)が豊富で、宿主範囲決定に関連するアクセサリーゲノム領域を持つ。世代加速実験とゲノム解析によって、F. oxysporumが多様な環境にどのように適応するかを研究した。トマト植物、完全培地または最小培地平板での分離株の連続継代は、元のクローン分離株と比較して、成長、発達、および病原性が強まり、それぞれの継代条件で有意に適応度が増加した集団をもたらした。集団中の分離の配列決定によって、ヌクレオチドレベルと染色体レベルの両方で変化が明らかになり、その多くは集団内で固定されました。検出されたバリアントの半分以上は転移因子(TE)挿入であり、HorminとFotの2つのTEが検出されたものの90%以上を占めていた。興味深いことに、同じ条件下で進化した複数の独立した系統は、同じ遺伝子座でTE挿入が起きていた。たとえば、完全培地プレートで継代した5系統のうち4系統は、未知の機能の遺伝子にTE挿入を持ち、これらの系統のうち3系統は、後に調節遺伝子velBの非同義二次変異を獲得した。これらの結果は、DNAトランスポゾンがF. oxysporumの適応進化の主要なドライバーとして機能し、真菌の侵入と増殖に有利な発生プログラム間のトレードオフを明らかにすることを示唆した。
講演終了後には聴衆からの質問が多数あり、教員だけではなく多くの学生に刺激を与える非常に有意義なセミナーであった。また、さらにその後、本学大学院生などがショートプレゼンテーションを行い、Di Pietro先生とディスカッショし、チーム研究の推進を図った。

 

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