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寄生性微生物による宿主操作の分子メカニズムの解明

【ライフサイエンス】 佐々木チーム

  • 研究概要

    植物や昆虫などに微生物が寄生するという現象は、我々の社会に様々な影響を与えています。農業や養蚕業の分野では、微生物の寄生がしばしば病気を引き起こし、農作物や繭の生産量を減少させています。一方で、継続的な寄生は宿主生物の抵抗性を生み出しており、このような抵抗性の利用は、安定生産可能な品種や系統の育種開発につながっています。また、寄生性微生物を利用して,周期的な病害虫の大発生を制御する研究も進められています。我々の研究チームは、効果的な病害虫防除や有用生物保護の技術開発につなげることを目標に、どのように微生物が宿主を操作して寄生適応度を高めているのか,その分子メカニズムの解明を試みています。

  • 研究目的

    植物や節足動物を宿主とする寄生性微生物を対象とした研究は、これまで分野ごとに断片的に行われてきました。植物病理学と昆虫病理・生態学の研究者からなる我々の研究チームは、国際共同研究者のRichard Nelson博士とSeth Barribeau博士を加えて、「寄生性微生物の宿主操作」というコンセプトの元で病原体の感染メカニズムや宿主抵抗性の誘導メカニズムについて分野を超えて総合的に理解し、それらの知見に基づいたバイオロジカルコントロール(生物制御)による病害虫防除や有用生物保護への応用を目指します。我々の研究では、主に病原体と宿主細胞が直接接触する生体膜での相互作用に着目して、「イメージング解析による生体分子の可視化」と「オミクス解析によるゲノムおよび遺伝子産物の網羅的理解」を軸とした研究を進めます。

  • 研究計画

    (1)病原性植物ウイルスの宿主膜改変を介した複製移行成立メカニズムの研究
    トマトモザイクウイルス(ToMV)やオオバコモザイクウイルス(PlAMV)などの植物ウイルスについて、宿主細胞内でのウイルス複製装置形成や原形質連絡を介した細胞間移行に必要とされる宿主膜(細胞膜や小胞体膜など)に着目し、関連宿主因子のスクリーニングやウイルスと宿主の分子間相互作用解析を進めます。

    (2)病原性植物ウイルスに対する抵抗性誘導の分子メカニズムの研究
    タバコのN遺伝子を介したウイルス抵抗性誘導時に起こる植物膜の構造変化とテルペノイド系化合物の合成関連遺伝子群の発現が変動の関係性を調べると共に、抵抗性誘導の強化に繋がる有用植物遺伝子の探索と機能解析を行います。

    (3)共生微生物によるチャハマキのオス殺しの研究
    「オス殺し」は、細胞内共生微生物が感染による節足動物のオスの選択的致死として知られています。本研究では、茶の重要害虫であるチャハマキに感染し、オス殺しを引き起こす昆虫ウイルスや共生細菌(ボルバキア)を対象とし、オス殺しに関わる病原性遺伝子やタンパク質を同定するとともに感染昆虫における病原体の細胞組織内局在やオス殺しの作用機序を明らかにします。

    (4)マイマイガにおける核多角体病ウイルスの適応戦略
    マイマイガの周期的大発生の終息に関わることが知られているマイマイガ核多角体病ウイルス(LdMNPV)の病理学的特性の比較および、環境中および宿主内での動態について解析します。

    (5)外来生物セイヨウオオマルハナバチの侵入に伴った内部寄生性微生物の感染拡大リスク評価
    マルハナバチ類の減少への関与が示唆されている微胞子虫(Nosema bombi)について、LAMP法による特異的検出方法を用いてイギリスと日本での微胞子虫による有病率を調べ、感染虫から単離したN. bombiの生活史形質の比較研究により本病原体の毒性の進化を明らかにします。

    (6)カイコのウイルス抵抗性メカニズムの研究
    カイコ濃核病ウイルスによる感染や発病が全くみられないカイコが示す“完全抵抗性”の決定因子と考えられている膜タンパク質について、相互作用するウイルス因子や宿主因子のスクリーニングと機能解析を進め、ウイルスレセプターとしての機能を明らかにします。

代表者について

外国人研究者について

Richard S. Nelson

所属研究機関 オクラホマ州立大学 (米国)
部門 Department of Entomology and Plant Pathology
職位 客員教授
URL

その他の研究者

井上 真紀 (農学研究院・准教授)
伊藤 克彦 (農学研究院・准教授)
小松 健 (農学研究院・准教授)

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